詩人・茨木のり子とふるさと西尾-2
写真は「詩人 茨木のり子とふるさと西尾」展の図録の表紙と、ページ内容の一例です。今回の展示については、茨木のり子(1926-2006/以下のり子とする)の刊行図書の他、アルバム写真も含め、西尾の写真がふんだんに使われ、日記や詩なども西尾に関係する箇所に光があてられ、タイトル通り のり子が育った西尾との関連がよく分かる展示になっていました。 ところで今回は展示資料の撮影が可能で、図録写真の掲載許可もいただきました。 これはもちろんご遺族のご厚情によるものと、これから茨木のり子の「ふるさと西尾」を、全国に向けて発信していこうという関係者の思いから来ていることと思います。そういうことで単発の紹介だけで終わろうと思っていましたが、もうちょっと続けてみたいと思います。 まず、私が茨木のり子の詩がなぜ気になったかという、(というかこれしか知らなかった)とっかかりの作品「わたしが一番きれいだったとき」を載せてみました。この作品を知らなければ、いくら彼女が愛知県で育ったからといっても、ただ「ふ~ん」で終わっていてここに取り上げることもなかったでしょう。 たぶん同世代の女子学生は誰もが、その頃を振り返って「若かった頃は戦争で不幸だった」と思っていたことでしょう。 ただ皆んなもそうは思っていても、なかなか のり子の様に詩などの形で発表するとか、己の鬱積を晴らすかのような事はなかったことでしょう。19歳で敗戦を迎えた灰色で暗かった青春時代を、11年後の31歳になった時に振り返って書かれたこの詩は、戦争の悲惨さを言葉をたくみに選び、持ち前の反骨精神で明るく吹き飛ばしているかのようにさえ見えます。 「とんでもないところから青空が見えたり」、「おしゃれのきっかけを落として」とか、「男たちは挙手の礼しか知らなくて」とか、「手足ばかりが栗色」だとか、随所にユーモアなのか皮肉っているのか選び抜いた言葉を注ぎ込んでいます。 しかしそうかといって、大事な事がらは漏らしてはいません。第4連の「わたしの頭はからっぽで、かたくなで」とか、ラスト前の7連目、「わたしはふしあわせ、とんちんかん、さびしかった」の語句からは、一見意味不明で矛盾するようにも見えますが、当時の心の動きがしっかり綴られています。 彼女の反骨精神が如実に表れているのは、やはり第5連の、「そんな馬鹿なことってあるものか、ブラウスの腕をまくり、のし歩いた」あたりに見られるスパイシーな言葉でしょう。そして最終連の「だから決めた」や「ね」の前向きな締め括りが、穏やかで爽やかな読後間をあたえています。 とはいいながら これは単に私の感想で、詩の解釈は人によりけりです。(ひとつぐらいは解説じみた話をと、あえて書いてみました)
by ttru_yama
| 2016-02-20 23:40
| 茨木のり子
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