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0910-「20世紀少年」の町-280 (南吉生誕102年-135)

與田 凖一のふるさとを訪ねて-5

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ここでは新美南吉の発行した本について見ていきます。最初に発行されたのは「良寛物語 手毬と鉢の子」(S16年10月学習社/新美南吉記念館蔵)という良寛さんの伝記物語です。
とはいえ幼少の頃の良寛については、きちんとした資料は無く、そこを南吉が想像して書いているので、幼少期部分は南吉の創作伝記ともいえます。

これ以前に南吉は大岡越前の話も書いていますが、これも創作している部分があり、そういう意味でも「良寛物語」は、大々的に南吉作品と言ってはばからない事でしょう。


0910-「20世紀少年」の町-280 (南吉生誕102年-135)_f0005116_15285548.jpg次に出版されたのが、亡くなる前年S17年10月発行の、第一童話集「おぢいさんとランプ」(有光社)です。この出版には、兄貴分の先輩である「巽聖歌」が大きく関わっています。

巽聖歌著「新美南吉とその生涯」には、有光社で新人童話集で出すこととなり、関英雄、下畑卓の他に南吉が選ばれ、南吉が送ってきた幼年向き原稿に対し、聖歌は高学年向きのものを基調にするようアドバイスしています。

この頃「與田凖一」からも南吉へ、「赤い鳥」に載った作品を中心にして本を出版する話があったようで、それを知った聖歌は「地団太をふんだ」と書いています。
こうして「おぢいさんとランプ」は刊行されました。その出版記念会も予定されていましたが、南吉は体を壊し学校を休んで静養するも、翌年3月に喉頭結核にて永眠します。

0910-「20世紀少年」の町-280 (南吉生誕102年-135)_f0005116_2139061.jpgそしてこちらが翌S18年3月の、南吉が没した半年後に出版された「花のき村と盗人たち」(少国民文芸選/S18.9発行)です。先述の通り南吉のもう一人の先輩である、與田凖一が関わって出版されました。

ところで残念なことに、與田とのやりとりを記した手紙は南吉全集には無く、與田凖一記念館でも見つかっていないとのことでした。日記の方でも聖歌ほども記述はなく、私もこの本が與田の世話によって発行されたことをこれまで見落としていました。

この本の出版を準備していたS17年頃、與田は帝国教育会の出版部にいたようで、おそらく聖歌と同様に、力のある後輩を育てようとしていたのだと思います。
その南吉の葬儀には、巽も與田も出ていますが、二人とも南吉に無理をさせたという自責の想いを抱かせたようで、この本のあとがき「花のき村・・・・の著者を悼む」にも二人の南吉に寄せる想いが記されています。
(つづく)
by ttru_yama | 2015-11-12 12:04 | 新美南吉
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