南吉の舞台劇と朗読会
やっと「春の電車」シリーズが終わったところで、春先からすっかり溜まっている生誕100年イベントをふり返る予定だったのですが、忘れないうちについ最近のイベントを紹介します。 まず右はこの10月20日、南吉の安城高女時代の下宿先で行われた、安城出身の女優・石川恵深(えみ)さんによる朗読会です。 南吉の下宿先・大見家の長屋門の部屋は今年復元され、6月26日お披露目会がありました。その時地元の新田小学校の児童により詩の朗読がありましたが、今回のものはおそらくその後初の朗読会かと思います。 石川さんは「でんでんむしのかなしみ」や「でんでんむし」、この下宿先のことを詠んだ「百姓屋」等の詩を朗読し、かつて南吉の暮らしていたこの部屋で、このような催しができたことを喜びの表情で語っていました。 また場所を提供した大見さんも、7/27に紹介した南吉探訪スタンプラリー以後も、非常に協力的で機会があれば、またこういう催しに場所を提供したいと話されていました。 そして左のイベントは、10/19・20に半田市亀崎(かめざき)町の来教寺にて行われた、劇団オクムラ宅さんの「新美南吉の日記 1931-1935」公演(主催/ろじうら実行委員会)です。 私がこのイベントを知ったのは、「春の電車」を数回記述した頃で、ワキタヨシコさんのワークショップに行った時に、貰ったチラシからです。その時のチラシは亀崎町での「ろじうらイベント」VOL.4のチラシで、ワキタさんの出店も書かれている中の小さなイベント記事でした。(赤枠内) 冒頭の「新美南吉の日記」のチラシは、その後亀崎の通りで貰ったもので、たぶん半田市の観光施設等でも、置いてある所は少なかったことと思います。ですから「春の電車」を書いていなければ、いくら同じ半田市内といえども南吉とは縁の薄い、この亀崎町での舞台は見逃していたことでしょう。 ただこの劇は主催者の「ろじうら」さんの招きで催され、もっといえばその場所が来教寺さんの本堂で行ったことで、おそらく過去のどの会場で行われた芝居より、エンディングでの場所特有の舞台効果が高かったように思います。(もしかしたら、かなり似通った舞台が、あったかも知れませんが・・) 話をいきなりエンディングの効果に持って行くと、ネタバラシになる恐れがありますが、この写真は来教寺の本堂から見た境内の景色で、おそらく他所では見られない特有な光景と思うので、ここに載せておきます。(もしクレームが出たら外すかも知れませんが) オクムラさんは自ブログの「『新美南吉の日記 1931-1935』に関して③(演出のこと) 』の中で、『 ごくごくたまに出会える「なんだか全く拙いのに俳優さんがキラキラして見えてどうしようもなく感動しちゃう」っていうあの奇跡・・』という話をされていますが、私はこの景色が「この場所特有の効果」で起こった奇跡のように感じました。 (でもたぶん、劇的なエンディングを観ていない人には、ほとんど何を言いたいのか解らないでしょうね) 恥ずかしながら私は、開演前に「南吉の作品に積み木なんか出てきましたっけ?]と聞いてしまいました。役者さんからは笑われましたが、この積み木はある時は小さなネタに何度か、そしてある時は大きな効果を発揮します。(テーブルが二組あるのも重要なのですが、その秘密はここでは言えません) あと補足ですが、観客は本堂の閉められた雨戸をバックに向かって観劇しますが、これが来教寺での観劇スタイルです。 ・・と、あまり舞台の内容に関係ない話ばかりになってしまいましたが、南吉の特に1931(岩滑小学校の代用教員時代・最初の恋人との接近)-1935(外語学校時代・恋人との別れ)の5年間にこだわり、日記の記述にそって、南吉の性格や作品形成にも目を向けながら、二人の恋愛模様を綴っていきます。 おそらく、こんなに日記に書かれた南吉の言葉をそのままセリフに乗せながら、劇的なラストに持ち込んだ作品は、今までになかったと思います。途中まではずっと南吉の日記の再現や解釈等で終わってしまうのかと思いましたが、最後に見事に裏切られます。 男女4人の役者さんで演じているのですが、特に最終ラストでは日記から離れた演技となるので、その解釈は観客に委ねられる要素もあり、役者さんの演技にも目がはなせませんでしたね。南吉日記を読んでない人でも理解できるようになっていますが、読んでいる人の方が、結末に驚くよう仕組まれている様に思いました。
by ttru_yama
| 2013-10-20 23:00
| 新美南吉
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