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0910-「20世紀少年」の町-350 (南吉生誕103年-167)

半田から安城へ 南吉さんの贈り物
f0005116_22523749.jpgさる6/11(土)安城市南吉下宿先にて、掲記の催し物がありました。
南吉研究家でストーリーテラーである小野敬子(おのけいこ)さんは、毎月茨城県つくば市より半田市の新美南吉記念館に来られ、南吉の歌を歌われる左近治樹(さこんはるき)さんと、その奥様である玲子さんとともに「南吉童話の歌とお話の会」をされています。

今回はタイトルの「半田から安城へ 南吉さんの贈り物」とあるように、記念館でのお話会をそのまま安城の下宿先へ、持ち込んだ形の催しとなりました。

f0005116_1459479.jpg開始の1時間前、半田からの出演者ご一行が安城の南吉下宿先に到着されました。
梅雨のさなか、背後のハクモクレンの葉が緑に繁って綺麗です。(左端から新美南吉記念館、遠山さん、右に左近玲子さん、治樹さん、小野敬子さん)

f0005116_15294311.jpg縁側に南吉関係の本を置き、会場設営を行う左近さん。
私も参考にしていた小野さんの著書「詩碑の散歩道」、新美南吉に親しむ会発行「安城の新美南吉」、矢口栄著「南吉の詩が語る世界」、南吉著「手毬と鉢の子」などがありました。

f0005116_16152514.jpg時間となり、左近さんの南吉オリジナルソング「ランプの思い」から「歌とお話の会」がスタートしました。
左近さんは小野さん等のお話の後、自作の歌の演奏をされました。
次に全員揃ってのご挨拶。今回の出前公演は左近さんの希望だったそうで、小野さんも下宿先の大見さん、南吉に親しむ会の協力に感謝され、今回は「うた時計」「一年生たちとひよめ」他、玲子さんは「かんざし」「かたつむりのうた」を聞かせて頂きました。
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こうした流れの中で、遠山さんは「一年生たちとひよめ」に出てくる「ひよめ」についての生態や呼称、そして現代にも歌い継がれている「ひよめの歌」、作品の元になった「嘘」という作品についても解説されました。

また「うた時計」については、掲載された「少國民の友」(S17.2月号)を記念館から持参され、目次などを読んで、昨年太平洋戦争に入った直後の時代背景や、当時ならではの検閲で問題になった箇所等を解説されました。
この中には巽聖歌も「神武天皇」という詩を寄せています。また南吉が当時の授業で教え子に「うた時計」を読んで聞かせた話もされました。

かくして「半田からの贈り物」は、歌あり、お話(作品)あり、解説ありの豪華版で、1時間半があっという間に過ぎていきました。
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by ttru_yama | 2016-07-06 23:49 | 新美南吉

0910-「20世紀少年」の町-349 (南吉生誕103年-166)

鴉根畜産研究所-5
f0005116_22113594.jpg鴉根の坂の頂上付近から、南成岩方面を見下ろした写真です。
背後に見える青やタンクの塔は、衣浦湾の向こう岸に見える碧南市の砂糖プラント工場ですが、その手前左端の赤茶けた屋根は半田のJFEスティール工場です。逆に言えば鴉根の「鴻の松」が、近隣から見えたというのがうなづけます。

さて南吉はこの鴉根の畜産研究所に3ヶ月いて、12月に本社勤務の辞令が出ます。その鴉根時代にも農場で働く婦人たちの解雇などを目撃するのですが、本社に行った南吉は当初は主人・杉浦治助に見出されることを喜びとしたものの、やがて憎み出すようになります。

f0005116_1633050.jpg杉浦治助自体はつつましく生活し、いわゆるブルジョワ然とした人物ではないのですが、「ひとの道教団」に傾向する、治助自身の信じるモラルがベースとなって進められる会社のつつましさ、例えば朝の体操とか暖房の行き届かないこと、俸給の安さなどに、南吉は反発を感じてゆきます。(写真:2013年3月、廃屋の杉治商会、ただし南吉時代の建物ではない。南吉は鴉根の寮から自転車でここへ通勤していた。)

「全く搾取である。屈辱である。修養とだとか何とか云って、それは搾取を甘受させるための言葉にほかならない。」(12.26の日記)
杉浦治助の説く会社モラルは、いわゆる資本主義の労働者搾取とは精神的には違ったかもしれませんが、南吉にとっては実質同じ事だったようです。

f0005116_17465941.jpg「マルクス主義的な考え方を年少時代に軆得してしまった我々二十代の青年達は一生不幸で終ることになるかもしれない。
何故ならその考へはあくまで我々の心の奥深く素喰ひ、併もそれはそれ自身で我々の運命を開拓していける程強いものでないからだ。」(写真は2016年6月現在の、貯蔵サイロだけ残った様子です。)

南吉の作品自体にプロレタリアート的なものはありませんが、この杉治商会時代の生活は、南吉の職歴としては異質な体験で、その後の童話作品にも少なからず、影響を与えていることと思います。(おわり)
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by ttru_yama | 2016-07-03 23:45 | 新美南吉